調教師は騎手を、騎手は調教師を――。
ロバートソンキーの
林徹調教師と
伊藤工真(たくま)騎手の間には、お互いをたたえ合う深い絆がある。
林師は「(前走は)工真ジョッキーがうまく乗ってくれました。本当に研究熱心。攻め馬もレースも感触を丁寧に伝えてくれますし、すごく考えて乗ってくれます。(その姿勢を)見習わないといけないなと思いますし、一緒に働いていて刺激になります」と騎手への感謝を伝えた。
それを鞍上に伝えると「先生はいつもそう言ってくださるんですよね。本当にありがたいです」と照れくさそうに笑った。その気持ちはジョッキーも同じ。「毎回しっかり走れる状態で(馬を)送り出してくれます。競馬に向き合ってくれる方。信頼して臨めますね」
2人の出会いは、15年以上前の競馬学校。学校ではいくつかの厩舎に分かれ、騎手課程、厩務員課程の生徒が馬の扱いなどを学んでいる。その厩舎が偶然にも一緒だったという。伊藤が「先生は牧場を経験して入られているので、僕は教えていただく立場でした。今思えば、その時から面倒を見てもらっていましたね」と言えば、林師は「工真は当時から真面目で一生懸命でした」と振り返った。
林厩舎のGI初出走は、
ロバートソンキーの20年
菊花賞。20年の
神戸新聞杯(3着)で、大舞台への切符を手にした。GIを戦ってきた馬たちが多数出走する中で、伊藤騎乗の
ロバートソンキーは1勝クラス2着から重賞へ挑み、14番人気ながら3着に好走。
師にとって、GI挑戦権を得た
神戸新聞杯は忘れることのできないレースだ。「工真のおかげで初めてGIの舞台に立たせてもらえました。工真が連れて行ってくれた。うれしかったですね。直線は頭が真っ白になりました(道中14番手から6着)。震えるような感動は、今も昨日のことのように覚えています」
その後、
天皇賞・春でもタッグを組んでシングル着順(7着)を手にしており、今秋も
オールカマー(25日=中山芝外2200メートル)の走り次第では大舞台が見えてくる。鞍上が「一緒に大きいタイトルに向かって頑張っていけることは、本当に恵まれていると思います。少しでも恩返しができれば」と意気込めば、師も「また工真と一緒にGI(候補は
天皇賞・秋、
ジャパンカップ、
有馬記念)の舞台に立ってみたい」と目を輝かせた。トレセンでも馬について話し込む姿をよく見る2人。強固な信頼関係で、
オールカマーへ向かう。
(美浦の同期の絆目撃女子・三嶋まりえ)
東京スポーツ